省エネも方便か

 温暖化対策関連政策の費用対効果の試算を聞いてから支持を表明した有権者はまだ各国にあまり居ないと思うが、果たしてそれは合理的政策なのだろうか。
 私の見解は、最終的に適切だが不誠実、といった所だ。例えば2050年に何度温暖化するのかは、かなり幅があり明確な所をいうことは難しい。そしてそうなった際の経済的損失を算出することはさらに難しい。また、予期せぬ原因により気候変動が起これば予想は大きく覆される。現在行われている政策の多くは、エネルギーの効率的利用と途上国の急激な発展にともなうエネルギー消費の増加の抑制を目的とするものではないか。まあそれはそれで先進国では許容されることだが。
 自分の現時点での意見をまとめると、
・10年単位で見たときに全地球的な気候は温暖化している。
・温暖化の一部の原因は人類の活動による。
・温暖化には長期的な気候変動が別の原因としてあり得る。
・今後10年単位のスケールで見た場合、大規模な介入が行われない場合人類活動の影響を上回る気候の寒冷化もあり得る。
・温暖化による被害の概算が明確に示されていないまま政策を採用することは誠実でない。
・誠実でないが先進国においては人類社会の持続的発展の為に省エネを促すものとして望ましい。
 といった所だ。
 電気自動車や家庭用燃料電池がこれほど高速に普及することを予想した人はあまりいなかっただろう。重量100kg未満くらいの、今だとまだ冗談みたいな一人乗り電気自動車なら、全世界が自動車化してもエネルギー需要に収まることができるだろうか。ええと、世界人口を90億として、一人が一日産業用も含めて100km走行距離を必要とするとして、燃費が…まあ甘めに50km/lとして、年間66億kl。これは足りない。2008年時点での世界のガソリン消費量の5倍を超えている。だが電力生産手段の多様化を含めてファクター5を実現すべしとここは言い張ろう。多分現時点でのガソリン消費くらいは2050年頃に再生可能化しているだろうから、走行距離を減らして燃費を向上させ電車を推奨すれば一人一台も不可能じゃあないと思う。
 電力需要で見ても、2003年時点の世界の総電力需要が年間15300TWh位だから、67億人に均すと一人当たり290Wを利用できる。皮算用だが。日本の生活水準だと900W位だから、人口増を考えても3.5倍くらい供給を伸ばすか利用を効率化するかすれば世界の工業化は可能である。その際の必要とされる出力は6TW、ピーク時を考えると12TW位だろうか。意外と手の届く所にある、というのが数字を見た実感だ。無論電気自動車が普及したとすると電力需要は…ええと、iMiEVが10km/kWhだというから、前述の100kg弱自動車により1日3kWh程度増えるとして、電力消費14%増し位か。どうだろう。ちなみに電池重量が200Wh/kgだとして、15kg、満充電から空まで使うわけにいかないからもう少し伸ばすとしても、何とか100kgに押し込めるか。長期的に途上国をそのままにしておくとかけちなことを考えるものではないと思う。