鷹は飛び立った

 皆様ご承知の通りFalcon1が4度目にして軌道速度を得ました。
 しかし、ここから進捗してFalcon9へ到達しても、それはまだソビエトが50年以上も前にスプートニクで到達した地点とさほど違わないと言うことを忘れてはならないでしょう。R-7とその眷属が打ち立て今なお伸び続ける1600基以上という巨大な業績の前では、全く西側は何してたのかしらと言わざるを得ません。そりゃ月には先に行ったし、経済戦争では勝利したけど。
 何しろソユーズは大型化し改良され続けてきたとはいえ、基本設計は世界初のICBMであるR-7の時代から変わらず実用に耐えているのですから。恐るべしはコロリョフ、そしてそのエンジンであるRD-107を既に1957年に製造していたエネゴマシュとそれを率いたグルシュコだということでしょうか。R-7の系譜はWikipediaR-7 familyの項が簡潔でよいでしょう。その1600基の内の多くがボスホート、モルニヤ-M、ボストーク-2M、ソユーズ-Uというどこかで聞いたことのあるかも知れない名前をしていました。今日の有人宇宙船であるソユーズTMA無人プログレス補給船は、ソユーズ-Uロケットの改良型であるソユーズ-FGで輸送されており、近くソユーズ-2に代替されるそうです。ソユーズ-Uのお値段は大体4億ルーブル、3人乗りのソユーズTMAも約4億ルーブルであり、合わせて日本円にすると35億円前後だそうです。
 この組み合わせとSpaceX社がFalcon9とDragon宇宙船で実現しようとする性能がどう違うか簡単に見てみましょう。まず輸送人員がソユーズ3に対しドラゴンは7人の予定です。ソユーズ-FGがLEOに7.1tなのに対しFalcon9は9.9tですし、カプセルの直径も違います。底面がソユーズの2.2mに対し多分3.6m。ソユーズはつくばで実機を見たことがありますが、すごい狭い。とても狭い。宇宙服を着て大人三人を押し込める設計とはちょっと信じられないくらい。さすがスラヴ的合理主義は違うな、と感じる所でした。これで月接近をやろうってんですから。また輸送能力はプログレス、ドラゴンとも2.5t前後ですが、プログレス、ソユーズとも軌道から持ち帰れる重量はほとんどありません。価格はFalcon1だけで35億円以上するので、今後の低価格化に期待したい所です。
 ここ数年でH-IIB、インドのGSLV III、Falcon9 Heavy、ゼニットを代替するロシアのアンガラ、長征5、そしてアメリカのAresIと、LEO20t級のロケットも一気に増えますので宇宙開発もまた面白くなって来そうな感じがします。
 そうそう、水城さんの所にミールに搭載されていたMSXの用途は何かという素敵な論考がございますのでここまでお出でになられたような方は是非ご一読下さい。